細胞からアンチエイジング。『マイトファジー』って何？

メディアで芸能人がオートファジーダイエットをしていると公言するなど、大きな話題になったオートファジー。しかし『マイトファジー』というのはご存知ですか？今回はマイトファジーとは何か、アンチエイジングとの関係、マイトファジーを活発化する食材を紹介します。

マイトファジーとは

マイトファジーは、老化し機能不全になったミトコンドリアを選択的に分解、排除するシステムのことです。

マイトファジーはオートファジーと呼ばれる働きの1種です。オートファジーは老化損傷した細胞の除去プロセスです。飢餓や特定のたんぱく質の欠乏によってオートファジーは増加します。マイトファジーも広義には、この老化や損傷した細胞の分解プロセスの1つにあたります。

マイトファジーの働き

マイトファジーの働きによって、損傷したミトコンドリアが分解されます。ところでミトコンドリアとはそもそも何なのでしょうか。

ミトコンドリアは1000を超えるたんぱく質から構成される重要な細胞内の器官です。ヒトの体内にありながら、mtDNA(ミトコンドリアDNA)と呼ばれる、ヒト本体とは異なるDNAを持ちます。細胞のエネルギー、アポトーシス(細胞の死)、自然免疫など細胞の多くのプロセスに関与します。

ミトコンドリア機能の調節は、細胞の健康のために非常に重要と考えられています。ミトコンドリア機能障害は胃腸疾患、筋骨格系疾患、癌、老化、糖尿病、アルツハイマーなど様々な病気と関連する可能性があります。

マイトファジーは損傷したミトコンドリアを分解する働きを通じて、病気の発症や老化プロセスに影響を与えると考えられています。

マイトファジーとアンチエイジング

マイトファジーが機能不全のミトコンドリアの掃除であることは、お分かりいただけたと思いますが、このミトコンドリアは老化と大きく関連する事が分かっています。

ヒトが加齢するとともに、ミトコンドリアDNAの突然変異や酸化ストレスの増加などが起こり、働きの衰えたミトコンドリアが蓄積します。この機能低下したミトコンドリアの蓄積は細胞の老化につながり、さまざまな加齢現象の主な原因となる可能性があります。

例えば3か月のマウスと比較すると、21か月のマウスのマイトファジーレベルの低下が観察されたり、高齢のヒトの骨格筋細胞ではマイトファジー遺伝子の発現低下が観察されました。これらの研究ではマイトファジーの低下により、損傷したミトコンドリアが蓄積したことが、老化につながる可能性が示されています。

マイトファジーが活発に起こり、機能不全に陥ったミトコンドリアの分解を行い、ミトコンドリアの正常な恒常性を維持することが健康を確保する上で重要になります。

マイトファジーを活性化する食材

トマト

マイトファジーを活性化する食材はトマトです。

トマトに含まれるトマチジン(トマチン)はミトコンドリアの機能を維持し、タンパク質(SKN-1)や核因子赤芽球2-(NFE2-)の活性化を通じてマイトファジーを誘発することが報告されています。

エラジタンニン

エラジタンニンはシデ類の植物です。天然ポリフェノール化合物の一つです。このエラジタンニンは老化した動物のマイトファジーを刺激することが研究により分かっています。

どうやってマイトファジーを起こす？

直接的にマイトファジーを引き起こすトリガーになるのは何でしょうか？

現在のところ、次の2つがマイトファジーを引き起こすという研究結果が得られています。

断続的断食

マイトファジーを発生させる最も一般的な手法である断続的断食は、加齢に関連する疾患の発症を遅らせたり、重症化を軽減するなどの可能性があります。

カロリー制限

栄養失調を起こさない程度のカロリー制限は抗炎症作用や抗酸化タンパク質の生成などをもたらします。

カロリー制限を行うと、損傷したタンパク質の蓄積が減少します。更にカロリー制限は一時的な飢餓状態を引き起こし、タンパク質の分解の増加、機能不全になったタンパク質の蓄積を減少させます。

参考資料
[Mitophagy in Aging and Disease] Daniela Bakula* and Morten Scheibye-Knudsen
[The mitophagy activator urolithin A is safe and induces a molecular signature of improved mitochondrial and cellular health in humans]Pénélope A. Andreux, William Blanco-Bose
[The effect of fasting or calorie restriction on mitophagy induction: a literature review] Sanaz Mehrabani, Mohammad Bagherniya